ARCHIVE
サヴィル・ロウ最初のテーラーとして
ヘンリープール社のアーカイブには、1846年から1950年代までの顧客台帳が、
一冊100ページ以上になるモノリシックな本120冊以上となって収められています。
Ledgers
プール社アーカイブの至宝は1846年から1950年代までの顧客台帳が、一冊100ページ以上になるモノリシックな本120冊以上となって収められた記録です。サヴィル・ロウにおいてこの台帳が貴重なのは、オーダー内容、顧客住所、提案デザイン、特注デザインなどがすべてナンバリングされてアップデートされているという点です。これはヘンリープール社が、いつオーダーされたどの商品が実際現物として、もしくは写真や彫刻によって残されているのかどうか、把握することが出来るということです。
ヘンリープール社がアーカイブ目録を作るために、キュレーターのジェームズ・シャーウッド氏と契約した当初、顧客台帳は浸水ダメージや劣化、そして分解しかけた革製のファイルから出る赤い粉などにより崩壊しかけていました。会長アンガス・カンディとマネージング・ダイレクターのサイモン・カンディの決定により、この貴重なコレクションを次の世代に継承するために、完全な修復と再製本のための資金を投入することになりました。この作業はロンドンのクラーケンウェルにあるワイヴン・バインダリー社によりなされました。ジェームズは5年の歳月をかけ1ページ1ページを丹念に研究し、プール社の作った服で着飾った著名な顧客の一覧を作りました。その一覧には世界の歴史に名を留める2000人以上の男女が含まれます。
Preservation
これらの台帳に加え、プール社の代々の会長たちには100冊を超えるファミリービジネスの受注や製作品に関する本、また個人的書簡、不動産書類、裁判関連書類、日記、アドレスブック、帳簿などなど、ヘンリーの父ジェームズが社長だった1830年代にさかのぼる資料を残し、保管しておくという先見の明がありました。これらの記録を見ると、ヘンリープール社が常に何らかの困難に直面していながらその都度打開策を見出し、独立企業として生き残ってきたことがわかります。アーカイブには他にも19世紀の華やかなドレスコスチュームやジョッキーシルク(騎手用衣装)、またレディースのテーラー品、生地、そして英国王エドワード7世からひ孫にあたる英国女王エリザベス2世に至るまでの王室の制服に関係するボタンや装飾品などのイラストなど、多岐にわたる資料が保管されています。
このアーカイブはより多くの研究者やヘンリープール社を何代にもわたって支援してきてくださった顧客のご一族にも容易にアクセスしていただくために作りました。顧客台帳のインデックスはデジタル化されており、また歴史的な服飾のコレクションはダイレクターのキース・レヴェットの指示のもとで随時追加されています。ヘンリープール社の伝記を作るにあたり、ジェームズ・シャーウッドとキースは、詳しい由来と共に保管されている当時の実際の服を探すために、チャートウェルのチャーチル・アーカイブ、ロンドン博物館、ヴィクトリア&アルバート博物館などにも足を運びました。